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プロフェッショナルは新聞を読んでいる

プルデンシャル生命保険 加藤 謙太郎さん 「継続して読むと会話力が高まる」

アクセンチュア 工藤 大輝さん 「見出しの表現をプレゼンの参考に」

グロービス経営大学院 識名 由佳さん 「きちんと取材して編集された安心感」

座談会 確かな情報の蓄積、自分への信頼に

プロフェッショナルとして働く社会人の皆さんは、新聞をどのように仕事に生かしているのか。それぞれの分野で活躍する加藤謙太郎さん(プルデンシャル生命保険)、工藤大輝さん(アクセンチュア)、識名由佳さん(グロービス経営大学院)に、話し合ってもらった。

「知恵」を売る仕事は情報収集が欠かせず

工藤 私は金融業界を経験した後、現在は経営コンサルタントとして働いています。企業の課題解決に貢献するため、お客様の会社に駐在してプロジェクトを管理する毎日です。「大人になったら新聞は読むものだ」と考えていたため、大学で一人暮らしを始めると同時に、地方紙と全国紙の2紙を契約して購読しました。

識名 私もコンサルティング会社、NPOを経て、現在は経営大学院で、教材開発や教科研究を行う研究員として勤務しています。「知恵」を売る仕事なので、日々、新聞などからの情報収集が欠かせません。

加藤 現在はプルデンシャル生命保険で、営業をしています。最初に就職した頃はインターネットはなく、情報ツールは新聞が中心でした。そのため、転職を考えていた時も、新聞の求人広告を眺めたものです。重宝したのが折り込みチラシ。生活エリアの情報を得るのにとても役立ちました。今はネットでも新聞が読めますが、紙の新聞を購読する良さはやはり、地域とリアルにつながっている感覚を得られることですね。

識名 私はタブレットで新聞を読んでいますが、ネットのおかげで、複数の新聞社の記事に手軽にアクセスできるようになって、読み比べしやすくなりました。ファクトは同じなのに、それに対する意見や提案などが違う点が面白いです。何か大きな出来事があった際は、特に意識して読み比べるようにしています。

工藤 私も今はスマートフォンで読んでいます。もともと紙の新聞の方が、「読んだ感」があって好きなのですが、社会人になり、満員電車でも読みやすい端末での購読に変えました。電子版でも、紙の新聞のレイアウトを保持しているため、ペラペラめくると偶然気になる記事に出会える良さはあります。キーワード登録などで、仕事に必要な記事を逃さず読める点もいいと思っています。

多面的な視点は働く上で有利に

加藤 今の仕事を選んだのは、目の前のお客様に全エネルギーを注ぐことができると思ったからです。せっかくなら、働く時間をお客様のために、そして自分のために意味のある時間にしたいと考えました。そのため、お客様との関係性を大切にしています。例えば契約日や誕生日に手紙を出したり、ニュースレターを定期的に発行したりしていますが、話題を集めるために新聞記事を参考にしています。また、法人のお客様には、その会社や業界に関する話をする事前に仕入れてからお会いすることで、目の前のお客様に集中するよう心がけています。

工藤 私たちコンサルティング会社は、企業が抱える様々な課題に対し、企業が抱える様々な課題に対し、適切な解を与えることが求められます。そのため、経済紙や業界紙から専門的な知識を得るだけにとどまらず、一般紙にも目を通します。すると様々な気づきがあり、物事を多方面から見る視点が得られ、仕事の上で有利になると思っています。

識名 私が新聞の情報を信頼しているのは、きちんと取材して編集されているからです。また、SNSなどで拡散された情報には、信ぴょう性に欠けたものも見受けられます。SNSの情報も、新聞が取り上げていると、そのファクトは本当なんだと信じます。そうした点で新聞が真偽を検証する役割を果たしてくれるのはとてもありがたいです。

新聞の有益な情報が信頼築くきっかけに

識名 社会人になったばかりの頃は、経験もスキルもありません。でも、小さなニュースでいいから、自分の仕事に関する確かな情報を知っていることは武器になります。朝一番に、そうした情報を信頼性が高い新聞から得てアウトプットしていけば、やがて自分自身の信頼にもつながるのではないでしょうか。

工藤 クライアント経営層や管理職の方は新聞を読んでいることが多いですが、現場の方々は日常業務に追われて、新聞を読む余裕がない方もいます。そうした人に新聞に載っている有益な情報を提供することで相手から信頼され、良い関係を築くきっかけになります。担当する業界の情報が載った記事や、担当企業の新聞広告などを先方に持っていくだけでも喜んでいただけます。こうした仕事に対する姿勢は必ず評価されます。

加藤 新聞には、時事ニュースのほか、家庭欄や文化欄など、生活の中で生かせる軟らかい情報も載っています。私は個人のお客様に接する機会も多く、フェイス・トゥー・フェイスで向き合う際、そうした情報はちょっとした会話のきっかけをつかむネタになります。話が弾むことがよくありますよ。

社会見る視点増やし課題設定の力を育む

識名 今、大学でも「課題解決能力」という言葉がキーワードになっていると思います。社会に出て実際に様々な仕事に向き合ってみると、課題そのものを設定することの難しさを実感しています。課題とは、理想と現実のギャップの間に存在するもので、いかに適切な設定ができるかがとわれます。まっすぐ一方向から見つめていてもなかなか見えてこないことが多いため、違う視点から見る必要があります。そのため、複数の新聞を読み比べることは、多様な視点を得るための良い訓練になります。

加藤 大切なのは、わずかな時間でもいいから毎日、新聞を読むことですね。継続することでいつの間にか、仕事上での会話がうまく成立し始めることが実感できると思います。経済紙と一般紙、朝刊と夕刊では記事の雰囲気が違います。様々な視点、コンセプトで書かれた多様な記事に触れることで、自分自信が社会を見る視点も変わってくると思います。

工藤 裏技的な使い方ですが、新聞を読むことは日本語の勉強にもなります。いくら良い提案でも相手に伝わらなければ意味がありません。新聞の見出しは短い言葉で記事の内容を表現していますから、プレゼンで一言に凝縮して伝えたい時などに役立てています。

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輪島塗の新たな価値を伝えたいものづくりへの思い、記者と同じ

輪島キリモト 桐本 泰一さん

大学で工業デザインを学び、文具・オフィス関連の企業に勤めた後、伝統工芸品「輪島塗」の生産・販売を、地元職人と共に手掛ける桐本泰一さん。「輪島キリモト」を継ぎ、漆器の新たな価値を提案する。最近、海外からも「漆(うるし)」の素晴らしさが評価され、活躍の場を広げている桐本さんは、新聞からの情報収集を大切にしてるという。

百貨店と同じ存在ワクワク感がある

日々の暮らしの中で「使って良かった」と思われる漆器を直接届けたくて、商品を扱ってもらう東京や大阪などの百貨店に頻繁に出向いてます。百貨店には優秀なスタッフが目利きした商品があり、見ているだけでワクワクし、子どものころはレストラン街での食事は一大イベントでした。しかし最近、百貨店を訪れる人が減っています。

新聞も若い人を中心に読む人が減っているようですが、私は新聞が好きで、地元紙はもちろん全国紙も購読しています。手に取る印刷物の中では一番大きく、広げてみると様々にレイアウトされた見出しが目に入り、短時間でいろいろな分野の情報をキャッチできます。取材のプロである記者の皆さんが、地元はもとより全国、全世界の情報を広く集めて届けてくれます。外出時にタブレットで新聞を読むこともありますが、新聞の魅力は、工夫が凝らされた紙面レイアウトにあります。見出しの大きさに強弱があり、厳選された写真は印象に残るため、紙の新聞を読むとワクワクします。

ビジネス巡る環境に敏感でいるためにも

最近、私たちの漆器を多くのメディアが取り上げてくれるようになりました。記者の方が気持ちを込めて書いてくれるのでうれしくなり、ついついこちらから材料を提供するうちに、良好な人間関係が生まれているのかもしれません。地元紙や全国紙が取材してくれることで、多くの人が輪島塗を知るきっかけになっています。

先日、「将来性や貢献度の高い中小企業への融資を推奨する」という記事を見ました。国や自治体がどういう政策をとるかで商売が変わるため、ビジネスを取り巻く環境に敏感でいるためにも新聞を定期的に読む大切さを痛感しています。

輪島塗は、実に多くの工程を手間暇かけて熟練した職人が作り上げます。対面でお客様に説明して、ようやく手に取ってもらえます。インターネットでも手軽に情報を仕入れることができますが、新聞記者が丁寧に取材し、こだわり抜いた情報だからこそ価値があります。自分と同じ、ものづくりへの思いにも共感しているのかもしれません。

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リオで採用の卓球台が報道されて自社ビジネスに誇りと勇気を持てた

TBSテレビ 小林 祥子さん

大学時代、女性新聞記者が語る思いに触れ、伝える力は社会を変える力につながると確信した小林祥子さん。TBSに入社し、記者になると思いきや、報道カメラマンとしてスタートし、その後、記者、ディレクター、プロデューサーとして多くの番組制作に携わる。現在は社内の情報システムを担当する部署で勤務し、新聞がないと仕事にならないという小林さんが、スクラップブックを手に新聞の力を語ってくれた。

企業でどう取り組むかCSR活動のヒントに

テレビと新聞は一見、競合すると思われるかもしれませんが、テレビが情報を伝える際は、参考情報として新聞各紙の報道を必ずチェックします。特に報道・情報番組の制作に携わっていた時には、新聞記事を切り抜き、ノートに分類して貼り情報を整理していました。新聞社の主張が載る社説は、賛成派、反対派の記事を見比べられるように並べ、自分なりの意見を書き込みます。複数紙をテーマごとにスクラップすることで、多様な意見に触れて、情報を時系列に整理できるのが紙の新聞の良いところです。

CRS(企業の社会的責任)を担当する部署にいた時には、他社のCRS活動などを紙面、特に広告面で確認していました。記事を継続して読んだり、広告もチェックしたりすることで、今社会で起きていることや時流といったものを感じ取ることができるため、社会から何が求められ、企業としてどう取り組むべきかをを考える上で、大きなヒントになりました。

取引先と接する際の会話を弾ませる糸口

仕事とは「人と人とのコミュニケーション」の上に成り立つものだと思っています。新聞には「5W1H」の体裁で事件事故の事実関係を淡々と伝える記事だけではなく、文学的な知識や教養が散りばめられたコラムもあります。例えば、「『鶚』という文字、何と読む?」というクイズ。鳥の「ミサゴ」と読み、実は米軍の輸送機「オスプレイ」は日本語では鶚という意味だということを、さりげなく教えてくれていました。

こうした情報は、軟らかな時事ネタとして職場の潤滑油となり、会話を弾ませる糸口になってくれます。取引先などと接する際にも、その会社について関連記事を読んだことがあれば、話題として提供することも可能。様々な人と話題を共有できる能力がコミュニケーション能力なのだと思います。

インターネットでもたくさんの情報が発信されていますが、多くの人が拡散しているから、または資金力のある大企業が発信しているから正しい、というわけではありません。大切なのは、誰が何のために発信しているのかを考え、信頼できる発信元かどうかを見極めること。信頼は一朝一夕に得られるものではありません。そういった点でも、玉石混交の情報化社会の今、伝統ある新聞の価値を再認識すべきだと思っています。

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リオで採用の卓球台が報道されて自社ビジネスに誇りと勇気を持てた

三英 巻田 英昭さん

「子どもに関わる仕事に就きたい」との思いから、公園の遊具やスポーツ用具を製造販売する三英に転職した巻田英昭さん。日本の技術を結集した同社の卓球台が、リオデジャネイロ五輪・パラリンピックで公式採用されて機能やデザイン性に注目が集まり、多くのメディアが報じた「今回の報道で自分の会社の力をあらためて知り、勇気づけられた」と話す巻田さんに仕事に生かせる新聞活用術を尋ねた。

常にアンテナ立ててビジネスチャンスを

三英はもともと材木店で、リオ五輪・パラリンピックで多くの方々に注目をいただいた卓球台をはじめ、公園にある木製遊具やデッキ、ベンチといった「木の良さ」を生かした製品を作っています。いくら良い商品でも、待っているだけで簡単に売れる時代ではありません。どんな商品が必要されているか、情報を積極的に収集する必要があります。

数年前、新聞を読んでいたら、健康遊具を公園に設置する自治体の計画を知りました。記事には具体的な予算や実施期間まで書かれていました。こうした情報を入手できれば、その自治体に自社の遊具をすぐに提案することができます。言い換えればこうした世の中の動きに常にアンテナを立てておかなければビジネスチャンスを失ってしまいます。

自分のキーワード持つと必要情報が見つけやすく

私たちは地方自治体や、地域に密着した民間の施設がお客様なので、地域の情報収集に努める必要があります。一方、全国的な社会のニーズや行政の動きにも着目します。さらに業界紙などの専門情報もチェック・・・・・このように聞くと「とても大変でそんな時間はない」と思うかもしれませんが、携わる仕事によって皆さんそれぞれのキーワードがあると思います。私なら「公園」。新聞を読む際、キーワードに着目すると、必要な情報を見つけやすくなります。自分で選んだ仕事であればなおさら、関連する記事を見つけた時は楽しいものですよ。

学生時代、バックパッカーとして世界を旅したことがあります。当時はガイドブックの情報や、宿に置かれたノートに旅人が残した情報が頼りでした。自分の意志で必要な情報をスマホで検索して旅するのは便利ですが、私が当時体験した旅には偶然の出会いがあり、そこから世界が広がることもたくさんありました。新聞もそんな一面を持っていると思います。

リオをきっかけにメディアの力で「歩かせてもらった」卓球台は、2020年には、いよいよ東京で皆さんにご連いただけます。仕事をしていると、新聞から情報を得るだけではなく、記事になることで勇気や誇りをいただくこともあります。

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様々な個性と能力を持つ子どもの学びに生かせる情報を集める日々

埼玉県立 秩父特別支援学校 師岡 優太さん

「学校が大好きな場所だった」と話す師岡優太さん。教職課程は取っていたものの、実際に就職したのはなんと東京・築地の仲卸業者だった。その後、もっと人と関わりたいと、飲食業へ転身。そこで人生の先輩たちから世の中のことを教えてもらううちに、子どもと接したい、大好きだった場所に戻りたいと考え、現在の職に就いた。師岡さんは、様々な個性と能力を持った子どもの学びに生かせる情報を、新聞をはじめ様々な情報源から得ている。

卒業後に生きていく社会大人が広く知らなければ

社会人としては、ずいぶん遠回りしたように思われるかもしれません。しかし、これまでの経験から、特別支援学校で様々な個性を持つ子どもたちと関わる上で必要な能力をたくさん得られたと考えています。事務処理能力、リーダーシップ性、体力、すべて今の仕事や活動に役に立っています。複数の仕事を経験し、社会を知ったことで、子どもたちに伝えられることが多くなったと思っています。

教員は子どもが卒業後に生きていく社会について、広く知ることが重要です。私自身、SNSも活用しますが、新聞から様々な知識を得ています。手元で厚みを感じながらめくっていくことで、国際情勢、政治、経済、教育と多様な切り口から、社会の流れを感じ取ることができます。特別支援学校では、それぞれの子どもが持っている能力は違うため、教育もオーダーメイドで、検定教科書を使わない授業も多くあります。新聞や雑誌などが発信する多角的な情報は、こうしたこどもの教育に役立つし、いかに教育につなげることができるかを日々考えています。

記事きっかけに広がる社会活動

以前、新聞記事で「すべての子どもに居場所がある学校」として大阪の公立小学校が取り上げられていて、気になっていました。後にその学校の日常を描いた映画「みんなの学校」が上映され、記事で紹介されていた取り組みを映像で目の当りにしました。当時の校長先生の教育方法に強く共感し、映画を市内の教職員にぜひ見てほしいと思い、教育委員会を巻き込み300人以上が集まる上映会を開催しました。このように一つの記事が社会的な活動のきっかけになることを実感しました。

職員室でもよく、地元の埼玉県や全国的な取り組みを紹介した記事を、校長先生が共有してくれます。授業で新聞を作ったり、修学旅行の調べ学習で新聞を参考に資料にしたりしています。意外な活用としては、話を聞くのが苦手な子には、端的に短い言葉をかけるのですが「キャッチャーな新聞の見出し」が参考になっています。

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多様な意見や豊富なデータを引用 仕事のプレゼンテーションに説得力

日本アイ・ビー・エム 中村 里奈さん

大学時代は文学部で日本文学を専攻し、日本アイ・ビー・エムに入社した中村里奈さんは、同社のコグニティブ・コンピューティング・システム「IBM Watson(ワトソン)」を、金融機関でいかに活用できるかを模索している。社会人になり、自分の仕事と向き合い、仕事に生かすため、新聞を読む必要性を実感しているという中村さんの新聞活用術とは。

同じ情報、顧客と共有仕事進めるメリットに

「ワトソン」については、新聞に度々取り上げられていて、お客様からの関心や期待も高く、様々な質問をいただきます。そうした質問に適切に答えられるよう、自社製品の知識はもちろん、競合他社の製品情報や社会の時流を把握するために、日頃から新聞に目を通し、情報を得ることが大切だと感じています。

私が担当する金融業界では今、IT(情報技術)を駆使して金融サービスを生み出す「フィンテック」が話題です。新聞は詳しく解説しているので、お客様もそうした記事を目にしています。私も新聞を読むことでお客様と同じ情報を共有できるため、コミュニケーションが円滑になり、仕事を進めやすくなるというメリットもあります。

新聞を読んでいると、自社のサービスが社会にどのように理解され、評価されているかを客観視できます。金融業界で今どんな動きがあるのか、どのような技術が誕生しているのかといった最新情報も手に入れることができます。様々な関心やニーズを持ったお客様に向き合うためには、新聞はなくてはならないツールの一つになりました。

インプット・アウトプット両方に役立つ教材として

ロジカルシンキング(論理的思考力)や交渉能力が身につけば仕事に役立つと考え、ディベートの勉強会に参加するようになりました。そこでは「お題」が当日発表されるため、議論するテーマに関する情報をあらかじめ仕込むことはできません。そこで問われるのは、日頃どれだけ情報をインプットしているかということ。お題は日常的な問題意識から選ばれることが多いため、新聞を読んだ記事やコラム、社説などが役に立ちます。ディベートでは、新聞のデータや意見を引用することで、自分の主張に説得力を持たせることができます。これは仕事でのプレゼンテーションでも生かせるテクニックです。

新聞を読むメリットはインプットがメインと思われがちですが、アウトプットにも役立ちます。新聞は自分の思考に新たな視点を与えてくれます。様々な立場の方と接する機会が多い社会では、瞬時にアウトプットが求められることもしばしばあります。その際、新聞記者やコラムニストの視点が参考になっています。まさにコミュニケーションの技法を学ぶ教材として新聞を読んでいます。

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立場の異なる人の考えに耳を傾け境遇や価値観の壁を乗り越えたい

官民協働ネットワーク Crossover 国家公務員 池田 洋一郎さん

「戦争のない世界をつくりたい」-。小学生時代の思いを胸に、国家公務員として働きながら、「官民協働ネットワークCrossover」の活動を展開する池田洋一郎さん。社会人になって以来15年間、立場や価値観の違いといった人々の間にある壁を越え、組織や社会が抱える問題や争いごとを解決するための人の輪を広げてきた池田さんは、仕事や活動で新聞をどう活用しているのだろうか。

自分の興味だけでなく森羅万象に関心持とう

国家公務員を志し、財務省の門を叩いたのは、「安定した経済環境をつくることで、社会から争いごとの種を減らしていけるのでは」という問題意識からです。同時に新聞などで報じられる「省庁の縦割りの問題」も実感し、各省庁の同期生有志と「縦割り思考に染まらず、省庁間の〝壁〟がもたらす問題を解決したい!」という思いを共有しました。これがCtossoverの原動力となっています。違いを強みに、対立を協働へと変えていく触媒となると考え、異業種間対話の機会を提供し続けてきました。

財務相での初仕事は国の予算編成でした。「政府の予算は森羅万象に関わる社会に対するアンテナを広く持て!」と上司からハッパをかけられながら毎朝、新聞各紙から予算に関する記事を切り抜き、上司・同僚と共有していました。そんなとき、経済面だけでなく、医療、防衛、教育など、多様な角度から国の予算が報じられることに新鮮な驚きを覚えました。

社会で起きている「今」をバランス良く知るツール

手軽に情報が手に入る今だからこそ、新聞の役割が高まっています。ネットは便利ですが、興味のある記事、賛同できる論調ばかりをクリックしがち。それでは視野は広がらないし、先入観を強めてしまうおそれもあります。ネットにあふれる情報は真偽が曖昧なまま拡散される傾向がもある。この点、新聞はクオリティー(質)、ニュートラリティー(中立性)、バラエティー(多様性)のバランスをある程度備えています。

中央省庁に限らず、多くの組織や社会に見え隠れする壁は、人の内面にある偏見や先入観によって、より厚く、高くなります。壁の弊害を克服するには、曇りなき眼、注意深い耳、そして好奇心を持って、立場の違いを乗り越えなければなりません。難しいことですが、Crossoverの活動と新聞を読む習慣は、そうした力を高めてくれる大切な栄養素だと感じます。

新聞は基本的にモノクロですが、彩り豊かな情報や視点が満載。日々、新聞を開けば、底には自分の関心を超えた、社会の動きや問題が載っています。好奇心を持って読み、自分を取り巻く壁を「クロスオーバー(乗り越える)」する力を高めてみてはいかがでしょうか。

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「安心して自由に移動できる社会」を目指して様々な角度で取り組む

本田技術研究所 荒井 雅代さん

仕事を通じて芽生えた問題意識に取り組もうと、大学院にも通う荒井雅代さん。本田技術研究所で人型ロボット「ASIMO(アシモ)」や未来交通システムの研究に携わった後、現在は電動車両と交通システムといった「モビリティサービス」について研究している。そんな荒井さんに、デジタル時代だからこそ気付いた新聞の価値について聞いた。

検索の時代だから社会見渡す紙の力

ホンダは、「すべての人が、心から安心して、どこへも自由に移動することができる。そんな喜びのある社会を作りたい」という理念のもと、人々が安全に移動できる環境づくりに取り組んでいます。その中で私は、社会のどのような環境が人の移動の妨げになるのか、様々な角度から検証しています。

「人の生活を豊かにするためにどうしたら良いか」を考えるには、社会を一方向からだけではなく、多方向から見つめることが重要です。社会を見渡し、満遍なく把握するためにも、一貫性がある紙の新聞を購読していました。仕事に必要な情報は、検索機能のあるデジタル版が効率的だと感じ、最近はデジタル版の記事や記事データーベースを使うことが多くなっています。

大学院に通うようになり、年齢も職業も多様な同級生と出合ってから、自分の知らないことに触れる機会が増えました。自分が選んだ記事ばかりを読むのではなく、目の前に広げた紙の新聞を流し読みする大切さに気付かされています。

プロが書く記事で伝える力を養える

大学院では、仕事にも直結する「人の移動をどれだけ自由にできるか」をテーマに研究しています。個人の欲求が多様化し、社会問題が複雑化する中で、そうした欲求や問題の本質はどこにあるのかを見極めるために、社会で起きている事象を、多様な観点から伝える新聞の情報が有効だと感じています。

「伝えるプロフェッショナル」が書いた新聞記事は、説得力を持った文章で物事を客観的に伝えており、研究成果をまとめる修士論文などを書く上で、とても参考になると思います。記事はどんなデータを基にしているか、記者の視点はどこにあるか、読んだ私はどこに興味をもったのか。そうした目線で読むことで、正しく理解し、自分の言葉で説得力を持って物事を伝える力を養えると考えています。

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「情報が見えない社会」で自分の生き方を見いだす

水王舎 代表 出口 汪さん

現代文のカリスマ講師の出口汪先生は、新聞を読んで「論理力」を高めることが、これからの時代に必要だと提唱している。「情報化社会」と呼ばれ、多くの人がスマートフォンやSNSから、時間も場所も選ばず自由に情報を得られるようになった今だからこそ、社会を生きて働いていくためには、新聞を読むことが大切だという。その真意とは?

相手の立場から考える力を

多くの人がスマートフォンやSNSを利用するようになりました。現代は「情報化社会」と呼ばれていますが、私は「情報が見えない社会」になってきていると感じます。インターネットの普及によって、紙の新聞や本を読まなくっても、いつでも無料で様々なジャンルの情報を得られる時代になりました。さらに「AI(人工知能)」の進化に伴い、自分の好みや価値観にマッチした情報ばかりが自動的に集まってくるため、おのずと他に目をやる余裕がなくなっていると思います。

自分の求める情報が効率的に入手できることは確かに便利ですが、私には恐ろしい現象だと危惧します。21世紀となった今も、宗教観や歴史観が異なる国や地域間での争いが絶えません。それぞれの国には独自の教育や価値観があることを理解しないと、互いにいがみ合うだけの状況から抜け出せないでしょう。

様々な立場の人が生きる社会の一員として、私たちには、「相手の視点に立って物事を考える力」が求められています。

多様な意見に触れよう

相手の立場から物事を考える力を養うには、まず、自分の周りに集まる情報のすべてが客観的だとは限らないと認識する必要があります。特に指向性や価値観が似ている人たちでグループを形成しやすいSNSの世界では、自分に都合の良い、自分を愛撫する情報ばかりが集まってくる傾向があります。それを認識した上で、グループの外にいる人は全く異なる情報に触れて意見を形成していることを理解しなければ、「自分が正しく、相手が悪い」という二項対立に陥ってしまします。

多様な立場や幅広い視点から発信された情報に、日々触れることが大切です。それを手軽にできるのが新聞です。新聞の情報は、必ずしも自分が興味のあることや、自分にとって都合の良い内容ばかりではありません。紙の新聞は一度に全体を見渡せる一貫性があり、社会全体の動きをキャッチでき、多様な意見に触れることができます。

社会人は論理的に話せる力が必要

私は一貫して「論理力」、つまり物事を筋道立てて説明できる力の大切さを訴えています。社会に出ると、論理的に話さなければならない機会が格段に増えます。人を納得させる論理性のある情報には、内容を裏付ける根拠やデーターが示されています。しかし、ブログなどネット上の情報は、発信者の主観的な意見や感情に基づくものが多いのが実態です。そうした情報環境におかれている我々にとって、様々な情報の真意を見極め、上手に活用する力「メディアリテラシー」を身につけることが大切です。

新聞はネットに比べ、情報に客観性があります。また、新聞の記事が個別に語る事実や知識もさることながら、紙面に掲載される多くの記事から、現在はどのような社会なのかを捉えることができます。文章のプロが書いた記事を毎日読むことで、論理的に世界を捉える力も鍛えられます。世界の動きや様々な主張を把握し、自分の考えをそれと照らし合わせる習慣をつけることで、人間的な深さや教養を身につけることができます。

この激動の時代に、自分がどう生きていくべきか、明確な答えはありません。自分で様々な情報に触れ、その情報の真偽を見定め、より適切な判断を下す。こうした姿勢は、能力や技術が身につくということにとどまらず、その人の生き方を豊かなものにしてくれるのではないでしょうか。

こうした力を身につけるために、関心のある記事を要約して自分の考えをまとめた「ストックノート」を作るなど、新聞を活用しましょう。

出口汪(でぐち・ひろし)

1955年生まれ。東京都出身。広島女学院大学客員教授、立教大学講師、日本語・論理力を育成するための教材などを出版する「水王舎」代表取締役。著書多数。