プロフェッショナルは新聞を読んでいる
立場の異なる人の考えに耳を傾け境遇や価値観の壁を乗り越えたい
官民協働ネットワーク Crossover 国家公務員 池田 洋一郎さん
「戦争のない世界をつくりたい」-。小学生時代の思いを胸に、国家公務員として働きながら、「官民協働ネットワークCrossover」の活動を展開する池田洋一郎さん。社会人になって以来15年間、立場や価値観の違いといった人々の間にある壁を越え、組織や社会が抱える問題や争いごとを解決するための人の輪を広げてきた池田さんは、仕事や活動で新聞をどう活用しているのだろうか。
自分の興味だけでなく森羅万象に関心持とう
国家公務員を志し、財務省の門を叩いたのは、「安定した経済環境をつくることで、社会から争いごとの種を減らしていけるのでは」という問題意識からです。同時に新聞などで報じられる「省庁の縦割りの問題」も実感し、各省庁の同期生有志と「縦割り思考に染まらず、省庁間の〝壁〟がもたらす問題を解決したい!」という思いを共有しました。これがCtossoverの原動力となっています。違いを強みに、対立を協働へと変えていく触媒となると考え、異業種間対話の機会を提供し続けてきました。
財務相での初仕事は国の予算編成でした。「政府の予算は森羅万象に関わる社会に対するアンテナを広く持て!」と上司からハッパをかけられながら毎朝、新聞各紙から予算に関する記事を切り抜き、上司・同僚と共有していました。そんなとき、経済面だけでなく、医療、防衛、教育など、多様な角度から国の予算が報じられることに新鮮な驚きを覚えました。
社会で起きている「今」をバランス良く知るツール
手軽に情報が手に入る今だからこそ、新聞の役割が高まっています。ネットは便利ですが、興味のある記事、賛同できる論調ばかりをクリックしがち。それでは視野は広がらないし、先入観を強めてしまうおそれもあります。ネットにあふれる情報は真偽が曖昧なまま拡散される傾向がもある。この点、新聞はクオリティー(質)、ニュートラリティー(中立性)、バラエティー(多様性)のバランスをある程度備えています。
中央省庁に限らず、多くの組織や社会に見え隠れする壁は、人の内面にある偏見や先入観によって、より厚く、高くなります。壁の弊害を克服するには、曇りなき眼、注意深い耳、そして好奇心を持って、立場の違いを乗り越えなければなりません。難しいことですが、Crossoverの活動と新聞を読む習慣は、そうした力を高めてくれる大切な栄養素だと感じます。
新聞は基本的にモノクロですが、彩り豊かな情報や視点が満載。日々、新聞を開けば、底には自分の関心を超えた、社会の動きや問題が載っています。好奇心を持って読み、自分を取り巻く壁を「クロスオーバー(乗り越える)」する力を高めてみてはいかがでしょうか。